私は涙を拭う。

ダボくんは拳を作って唇を噛み締めた。



「ごめんね、ダボくん」


私は背を向けた。



たとえ、私が行ったって意味がなくたって、邪魔になったとしても、コウの傍にいたかった。

何があったって、コウと一緒にいたかったから。


走った。


体のことなんて気にしてられなかった。

とにかく今は、コウの無事な姿を見なきゃ安心できないから。




その時、パンッ、パンッ、パンッ、と空(くう)を切り裂くような乾いた音が辺りに響き渡った。




嫌な予感が脳天から刺さる。

あれは発砲音だ。


多分、間違いない。


私は音の聞こえた方に走った。

雑居ビルにはご丁寧にも組事務所の看板が。



怖いに決まってる。



けど、でも、もしものことを考えたら、迷ってる暇なんてないから。

私は意を決してビルに入った。


階段をのぼると、2階の廊下の先にある扉。


鼻をつくような匂いがしてて。

ガシャーン、とそこから何かの割れるような音が聞こえた。




私は恐る恐る扉を開けた。