声を荒げ返され、私は言葉に詰まった。

ダボくんの言うことは正論だったから。


その時、サイレンの音を響かせ、救急車がやってきた。



「こっちです!」


ダボくんは救急隊員を呼び寄せる。



「状況は?」

「あ、えっと。こいつ、ふざけてたら包丁が刺さったみたいで。今は意識がなくて」


ダボくんは、ユキチくんの願い通りのことを言う。

カイくんがやったと言うつもりはないのだろうか。



「20代・男性、意識なし。失血がひどいです。すぐに搬送を」


ストレッチャーに載せられ、運ばれるユキチくん。

ダボくんも付き添うように、一緒に救急車に乗り込んだ。



「マリアちゃんも、早く!」


それでも私はその場から動けない。



「マリアちゃん!」

「……私」

「早く乗って!」

「私行けない……」


ユキチくんのことは、確かに心配だ。

けど、でも、コウの方がもっと心配で。



「何言ってんだよ! 時間がないだろ! もし手遅れにでもなってユキチが死んだらどうするんだよ!」

「じゃあコウが死んだらどうするのよ!」


ダボくんは目を見開く。



「私、やっぱりコウのところに行くから」