「コウ、嫌だよ……」

「言うこと聞けよ! お前まで何かあったらどうすんだよ!」


コウに何かあるみたいな言い方しないでよ。

だけど、涙と恐怖で言えなくて。


ダボくんはそんな私の腕を、血に染まった手で掴んだ。



「マリアちゃんは行かない方がいい。危険すぎる」

「離してよ!」

「離さない。コウと一緒に行っちゃダメだ」


コウとダボくんは目配せしてうなづき、



「すぐ戻ってくるから。ユキチのこと頼むよ」

「コウ……」

「俺が戻るまでちゃんとダボといろよ? で、これが終わったら、帰って“結婚記念日になりそこねた日”のパーティしよう。な?」


ダボくんは私の腕を掴んだまま。

振り払おうにもできなくて。


コウはまたダボくんとうなづきを交わし、私たちに背を向けた。



「コウ!」


声が、裏通りに響いた。

置いて行かれた私はへなへなとその場に崩れた。



「……ごめん」


ダボくんは悔しそうに声を絞る。



「でも、ほんとにマリアちゃんは行くべきじゃない。悲しいけど、カイはもう、俺らが知ってるカイじゃないんだよ」

「………」

「それに、こんなことで終わるとは思えない。カイはもっと別の何かを企んでる気がするんだ」

「だったら尚更、コウひとりで行かせていいはずがないよ!」

「じゃあ、マリアちゃんが行って何ができるっていうんだよ!」