「ほら、コウは私のことなんか気にせず、食べてよ。私も食べられる分だけ食べるし」

「いや、でも」

「『でも』じゃないでしょ。一家の大黒柱が栄養失調にでもなったら、どうやって私と子供を支えるの?」


コウは「だな」と苦笑い。

そして食事に手をつけようとした時、



「コウ!」


後ろからの呼び声に、コウは半開きだった口を引き攣らせる。

怪訝に振り向いた先にいた、ダボくん。



「大通りから見えてさ。ふたりで飯食ってんだったら、俺も呼べっつーの」

「邪魔すんな」

「お前、それが幼馴染に対する言葉かよ」


言いながら、ダボくんは勝手にコウの隣に座る。

と、そこで、テーブルの上に並べていた書類に気付き、「何これ?」と、手に取った。


あーあ、見られちゃったよ。



「ちょっ、おい! 触るな!」

「婚姻届? と、こっちは何?」


書いてある文字にさっと目を通したダボくんは、驚いた顔で私を見て、



「子供できたんだ?」

「ははっ」


苦笑いしか返せない私。

コウは「汚れるだろ」と、ダボくんの手からそれを奪い返す。



「マジかよ。コウがパパに? 信じらんねぇ」


こめかみを押さえるダボくん。



「うるせぇなぁ。羨ましいなら羨ましいと、素直に言え」

「そうだね、羨ましいよ」