病院に行ったら、妊娠が確定した。
白黒のエコー写真を見せられたら、まだ米粒よりも小さいはずなのに、急に実感が湧いてきて。
コウは私以上に大喜びだった。
「なぁ、これどういう意味? ここ何書けばいいんだよ?」
「わかんないよ、私に聞かれたって。っていうか、そんなの家でゆっくり書けばいいじゃん」
病院からの帰りに役所に婚姻届を取りに行った。
カフェでランチを食べているのに、コウはそんなのそっちのけで書類を広げている。
「ねぇ、汚れちゃうよ。それより先にご飯食べようよ」
「善は急げって言葉を知らんのか、お前は」
「けど、急がば回れとも言うじゃない。焦ってミスするより、確認しながらゆっくり書いてった方がいいと思うけど」
「……そりゃそうだけど」
「それにさ、病院からもらった書類にだって色々書かなきゃいけないんだし。どのみち、ハンコもないのに今どうこうしたってダメでしょ」
コウはため息混じりにこうべを垂らした。
「女って何で、こういう時ほど現実的なんだろうな。浮かれてんのは俺だけじゃねぇかよ」
私の言葉にコウは不貞腐れたような顔をする。
私だってできれば手放しで喜びたい。
けれど、コウのお父さんには反対されたままだし、そういう問題はまだ山ほど残ってるんだから。
考えていると、また胃が痛くなってきた。
「大丈夫か?」
「え? あ、うん。ちょっと匂いがきつくて」
つわりってのは、かなり辛い。
でも、それを耐えてママは私を産んでくれたんだと思うと、感謝しなくちゃいけないことなのだと思った。
私もママみたいに、自分の子を愛してあげたい。


