「あたしずっと、てっちゃんの相談役でさ。お酒飲みながらお互いに愚痴ったり、クラブで騒いだりする時間が、すごい好きで」

「………」

「だからあたし、いつの間にか親友のマリアといるより、てっちゃんといる時間の方が楽しくなって。色んな悩みとか聞いてる分、てっちゃんには幸せになってほしいって思うようになってきたの」

「………」

「今考えたら、それっててっちゃんのこと好きってことだったんだろうけど」

「………」

「もちろんマリアにカレシができて、応援しようと思ったのは本心だよ。だって、マリアのことを嫌いになったとかじゃなかったし、私には同じくらい大切だったから」


「でも」と、沙希は言葉を詰まらせ、



「でもね、あの日、クラブでふたりが一緒にいる姿を見て、驚いたの。マリアは『もうてっちゃんとは戻らない』って言ってたのに、どうして、って」

「………」

「カレシが好きだって言ってたくせに、半端なことして、またてっちゃんの気持ちをかき乱してるマリアのこと、信じられなくなった。てっちゃんにも腹立った」

「………」

「けど、ふたりのこと聞いて。クスリのこととかも全部。そしたら、悔しくなった。どうしてあたしは今までそんなことすら気付けなかったんだろう、って」

「………」

「てっちゃんが公正施設に入ってるって聞いて、あたし、居ても立ってもいられなくなって。『クスリなんてもう止めてよ』、『あたしはてっちゃんの苦しみを聞いてあげる役でしょ』、『あたしがいるじゃん』って。それからは、まぁ、ね」


最後の方は曖昧に濁す。

ふたりは目を合わせ、ふたりだけの思い出を蘇らせるような顔でうなづく。



「ほんとはマリアに言わなきゃいけなかったのに、今更どう連絡していいかもわからなくて」

「私だってそうだよ」


重い沈黙が訪れて、そしたら口を挟んだのはてっちゃんだった。



「俺の所為で、お前らの仲まで壊してごめんな。ほんと、俺が悪いから。だから沙希のこと恨まないでくれよ」


沙希を庇うようなことを言うてっちゃん。

てっちゃんの優しさを感じたから、嬉しくなった。



「私は誰のことも恨んでないし、今もふたりのこと、大好きだよ」