高校の頃の思い出の品。

だけど、それはつまり、てっちゃんとの思い出の品で。


写真の中で、制服を着た私と、肌を焼いていた頃のてっちゃんが、キスしていた。



コウは息を吐いてしゃがみ込み、写真の一枚を拾い上げる。



「あの、えっと……。捨てたくなかったとかじゃなくて、ただ単に、そんなものがあることすら忘れてただけで、別に、私は……」


本当に、忘れてただけだ。

でも、言えば言うほど、言い訳染みてくる。


私は口ごもり、思わず顔をうつむかせてしまう。



「怒ってるとかじゃなくてさ」


言葉を手繰り寄せたコウを見た。

コウは写真を見つめながら、困ったように笑っていた。



「ほんと、俺、怒ってるとかじゃないんだけど。でもちょっと、嫉妬してる」

「………」

「何かさぁ、悔しいっつーか? テツ先輩は、俺が知らない頃のマリアを知ってるわけじゃん?」

「………」

「過去は過去だし、気にしてないって言いたいけど、やっぱ、本音を言えば、そう簡単には割り切れなくて」


一枚、また一枚と、コウは床に散らばった写真を拾う。



てっちゃんと幸せそうに笑って映る私。

沙希と変顔しながらふざけて映る私。


見た瞬間、走馬灯のように蘇ってくる、あの頃の記憶。



でももう、思い出したらダメだ。



「ちゃんと、捨てる。捨てるから!」