コウは、そっと私を抱き締めた。



「しても、しなくてもいい、なんて言うな。俺らは結婚しなきゃダメなの。神様がそう言ってんの」

「神様と話したの?」

「あぁ。今まで隠してたけど、実は俺にはそういう特殊な力があって、しかも俺は不死身だから――」

「はいはい」

「って、聞けよ、おい」


コウの胸の中でまた笑う。

そしたら不思議と湿っぽさがなくなっていく。



「とにかく、俺とお前は結婚する運命なんだ」


コウでよかったと、心から思う。



「つーか、愛し合う男女が結婚しないなんて、そんなの自然の摂理に反してるだろ」


コウとふたりで生きていきたい。

強く、強く、そう思う。



「それよりお腹空いたね」

「おいおい、『それより』って何だよ。今、すげぇ大事な話してる時だったろ」

「今日は豪華だよ。何作ると思う?」


私は無視して体を離した。

コウは諦めたように肩をすくめ、



「煮物がいいよ、俺は」

「誕生日に、煮物?!」

「何? 誕生日に煮物を食べたらダメって法律でもある?」

「そうじゃないけどさぁ。折角、私が腕を振るって美味しいものを作ろうと思ってるのに」

「お前が作る一番の『美味しいもの』は、煮物だ。そんで、ぶっちゃけると、お前はやっぱり和食以外は味が微妙だ」

「はぁ?!」


私が怒って、コウが笑って。

特別じゃない、けれど楽しかった一日だった。