「お兄ちゃん、もうすぐ誕生日でしょ? でもぼく、お兄ちゃんの好きなものも、欲しいものもわかんないから」

「………」

「だからね、お守りならいいかと思って。いっぱいあれば、それだけお兄ちゃんは無敵になれるよ。ね?」

「お前これ、どうやって買った?」

「お小遣い貯めたの」


コウは手に握ったそれに目を落とす。



「ここまで来る電車賃は?」

「それもお小遣いを貯めてたから、大丈夫」


コウは「そっか」としか言わない。

私は黙っているべきだと思った。


マサくんは目を輝かせ、



「電車の乗り継ぎの仕方は、インターネットで調べたんだ。ぼくだって来年は中学生だもん。これくらいへっちゃらだよ」

「馬鹿野郎!」


コウの怒鳴り声に、マサくんはびくりと肩を上げる。



「何かあったらどうすんだよ! 少しは周りのことも考えろ!」

「でも、ぼくは……」

「お前は俺とは違って、心配してくれる人間がたくさんいるんだよ! 俺なんかにもう構うなよ! 跡継ぎだっていう自覚持てよ!」

「………」

「こんなもん渡すためだけにこんなとこ来るなよ! 俺だって、すげぇ心配して……」


言いながら、コウは唇を噛み締めた。


思い返せばコウは、ここまで来る途中、一度も私の方を振り返ることなく、一直線に駅に向かって走っていた。

『嫌い』だと言いながらも、マサくんに誕生日プレゼントだって贈っていたらしいし。



「コウさぁ、素直になりなよ。ほんとはマサくんのこと、嫌いになりきれないんでしょ。だから苦しかったんでしょ」


コウは顔を覆う。

マサくんは、そんなコウに抱き付いた。