いつか話し合える時が来るなんていうのは、所詮は理想論でしかないのだろうか。

もう本当に、4人は心までバラバラになってしまったのだろうか。


息を吐きながら、ダボくんは言った。



「同じ街に住んでんだから、カイと会うことは可能だ。けど、多分、あいつはそれを望んでないだろうな」

「あぁ」

「悲しいけどさ、少なくともコウはカイにとってもう、“敵”なんだろう」


知りたくないと思っている事実ほど、色濃くなっていく。



私は、ぼうっとグラスを伝う水滴を眺めた。

涙ひとつ見せないコウは、もしかしたら泣けなくなったのではないかと、ひどく心配になる。


それは、私がいるからなんじゃないか、と。


コウは私といるから無理をしてて、私さえいなければカイくんとこんなことにはならなかったんじゃないか。

私の所為で、と、思わないようにすればするほど、考えてしまう。




クスリなんてしてた私が、と。




「って、マリアちゃん、大丈夫?」

「え?」

「顔色悪いから。風邪? 急に寒くなったもんねぇ」


ダボくんの問いに、私は曖昧にだけ「うん」と返した。



その時、コウの携帯が鳴った。

ディスプレイを確認したコウは、舌打ち混じりにそれを無視するが、着信音はいつまで経っても鳴り止まない。


コウは仕方がないといった顔で、通話ボタンを押した。



「何だよ? ……え? 今? はぁ? お前、何考えてんだよ、この馬鹿が!」


コウは怒りながらも「そこで待ってろ」と電話口の向こうの相手に言い捨て、電話を切った。