風はすっかり秋めいてきた、9月中旬。
けれども私たちは、いつも、少しの後悔と、諦めを繰り返しながら、立ち止まったままだった。
どうすれば前に進めるのか、わからないままで。
「ユキチのやつ、マンション解約してた。仕事も辞めてるみたいだし、だからって実家にも帰ってないらしい」
ダボくんは肩をすくめ、冗談混じりに「身内じゃなくても捜索願って出せるらしいけど、どうする?」なんて言う。
笑い話にもならない。
コウはダボくんを無言で睨みつけた。
「あいつは一直線なとこあるしなぁ。そのくせ、頑固だから。わけわかんないこと考えて、変なことしてなきゃいいけど」
ダボくんはまた肩をすくめ、
「俺この前、街でカイのこと見たよ」
「え?」
「けどもう、ありゃダメだわ。誰が見てもヤクザ。染まってるっていうより、違和感なしって感じ」
「………」
「しかも、マジで永友のおっさんと一緒にいたし。あのおっさん、ある意味、カイよりやばいっしょ。血生臭い噂しか聞かねぇもんな」
「………」
「ほんと、あいつは何を考えてんのかねぇ。あんなもんになったって知って、千夏ちゃんがどう思うか考えろっつーの」
言った瞬間、ダボくんは私の顔を見て、やばいと言った様子で「ははっ」と笑って誤魔化した。
コウは息を吐く。
「他には何かわかったことあるか?」
「ないよ。俺には今のところ、ここまでが限界。そもそも、カイ以上にこの街に詳しくなれるわけねぇもん」
「だよな」
そして、意気消沈。
いつも私たちは、こんなことばかり繰り返す。


