部屋に戻った。

夜の暗闇の中、月の輝きだけが淡く室内に光を灯す。


コウは私を抱き締めた。



「ごめんな、マリア。全部、俺の所為だ」


抱き締める腕に力が込められる。

コウの悲しみがそこから伝わってくる。



「やめてよ。私はコウを責めようとは思わない。それに、ダボくんも言ってたように、そんなこと言ってても何も始まらないよ」

「………」

「私はもう大丈夫だよ。コウのこと、信じてるから」

「俺のこと、嫌にならないの?」

「ならないよ。コウが私のことを嫌にならない限り、私はコウの傍にいる」


それは本心だった。

確かに、カイくんのことをどう思うかと聞かれれば、怖い気持ちもある。


けど、逃げてばかりじゃ何も解決なんてしない。



「コウとカイくんは、もしかしたらもう二度と、“親友”には戻れないかもしれない。でも、たとえどんなに時間が掛かったとしても、話さなきゃいけないこともあると思うの」

「………」

「憎しみ合ったままなんてダメだよ。いつか後悔する日がきても、その時にはもう遅かった、ってこともあるんだから」

「………」

「私だって、今は無理でも、いつかはカイくんがしたことを許してあげられる人間になりたい」


憎しみの連鎖は、人を不幸にしかしない。

そんな中で苦しみ続けるくらいなら、私はそんな悲しい未来なんていらない。



「大好きだよ、コウ。たとえ、世界中がコウの敵になっても、私だけはコウの味方でいてあげるから」

「マリア……」


コウは泣きそうな顔でまた私を抱き締める。

ついばむようなキスを繰り返す。