ダボくんは自嘲気味に言った。

コウはやりきれないといった顔で拳を作る。


ダボくんはズボンのポケットからふたつ折りの財布を取り出し、札入れに入れてあった一枚の、折り畳まれたしわくちゃの写真を空にかざした。



そこには、今より少し幼い顔立ちの4人が、満面の笑みで肩を寄せ合って映っていた。



「これ、覚えてるか?」

「覚えてるよ。ユキチが性病になったって騒いでて、したらカイが『初めての性病おめでとう』、『今日は記念日だ』って言って、俺らは爆笑して」

「そんで『ついでに記念写真だー』って言って撮ったやつ」

「何でそんなもんまだ持ってんだよ」

「コンパでネタになるんだよなぁ、これ。ってのはまぁ、半分冗談だけど。でもさ、実は俺、何でかわかんないけど、この写真、好きでさ」

「………」

「馬鹿やりまくったよなぁ。思い返してもくっだらない話なのに。昔は、何であんなにおもしろかったんだろうな。箸が転げても4人で笑ってたのに」


ふたりは悲しそうに目を伏せた。


その写真の中に私はいない。

やっぱり私さえいなければ、と、脳裏をよぎる。



「もう無理なのかな」


コウの呟きに、ダボくんは何も言わなかった。

代わりに、息を吐き、



「なぁ、コウ。お前の所為じゃないとは言わない。忘れろとも言わない。けど、自分を責め続けることに意味はない」

「………」

「今、何をすべきかだけを考えろ。もしそれが間違ったことなら、俺はちゃんと言ってやるから」


コウは顔を覆った。

泣いているみたいだった。



「……ごめん」


喧騒に消されそうなほど、か細い声。