どれくらいが経っただろう。

店が炎と黒煙に飲み込まれた頃、ダボくんが口を開いた。



「カイは本気みたいだな。あいつが何を考えてんのかは知らねぇけど、取り返しのつかないことにならなきゃいいが」


コウは唇を噛み締める。



「ダボは……」

「ん?」

「ダボはカイの側につくのか? それとも、ユキチのように抜ける?」

「どうしてほしい?」


ダボくんは逆にコウに聞き返した。

コウは顔を伏せる。


ダボくんは肩をすくめた。



「俺もまぁ、ユキチが言うように、今回のことはコウが悪かったと思うよ。だけど、お前は俺にとっては、腐っても親友だ」

「ダボ……」

「それに、カイはやりすぎだろ、さすがに。少なくとも、喧嘩してでも話し合ってれば、ここまでのことにはならなかったはずだ」


ダボくんは未だ燃え盛る店を見上げ、



「っていうか、周りにいたのに止められなかった俺やユキチだって、今となっちゃ同罪みたいなもんだしさぁ」

「ダボ。お前、何か知ってたのか?」

「知ってたってほどでもないけど。一年前、お前が千夏ちゃんと別れた頃くらいに、カイと大喧嘩したろ? あの時、何かあんのかなぁ、とは思ってた」

「………」

「おまけに少し前、カイが三澤先輩や後輩共に金渡して何かを頼んだって話を聞いて、おかしいとは思ってたんだよ」

「……え?」

「まぁ、まさかこんなことになるとは思わなかったけど。でも、マリアちゃんのこともあったし、今日どんな話をするかくらいは、大体わかってた」

「………」

「もっと早くにカイの話を聞いてやれてればな、って、今更思っても遅いのかもしれないけど」