「ごめんね。私さっき済ませちゃった」

「あー……」


それでも、どうしても私を誘いたいらしいコウは、視線を巡らせながら思案する。

笑ってしまう。



「うちに来る?」

「……え?」

「あり合わせでよければ、何か作るけど」

「マジで? つーか、俺なんか招いていいの?」

「だね。危ないね。じゃあ、前言撤回。やっぱりうちには来ないで。さよーなら」

「嘘! 嘘だって!」


腕を掴まれた。

私はついには腹を抱えて笑ってしまった。


コウは舌打ち混じりだった。



「顔に騙された。お前ほんとは性格悪いよな」

「っていうか、最初の時点で判断基準が顔っていうのが間違ってんのよ。ありえない」

「うるせぇ」

「嫌になったでしょ?」

「まさか。ますます服従させたくなった」

「うわっ、怖っ!」


貞操の危機を感じる私を、コウはケラケラと笑う。


やっぱりうちに呼ぶんじゃなかったかも。

なんて思ったけど、私たちはふたりで歩き出す。



途中でてっちゃんを見掛けたけど、でも知らない女の子の肩を抱いていたから、無視しといた。



「なぁ、酒ある?」

「あるよー。ビールが、箱で」

「マジかよ」


歩いていると、ちらちらと、コウを見る視線に気付く。

男も、女も、コウを見てる。


人の目を引く人だなと思った。