相変わらず、ごちゃごちゃしてて、うるさい街。

友達とクラブにでも行こうかと思ったが、こういう時に限って誰も電話に出やしない。


声を掛けてくるキャッチを無視して歩きながら、さて、これからどうしたものかと考えていた時、



「マリア!」


背後から私を呼び止める声がして、振り向いた。



「あ……」


先ほど私がバーテンに言付けた紙袋を手に、コウが、走ってきて。

そして息を切らして私の前に立ち、



「これ、バーテンに渡されて。入れ違いだって言うから、まだその辺にいるかと思って」

「あ、うん」

「つか、何で? やっぱもう俺には会いたくないって意味?」


コウは必死そうだった。

私は首を横に降る。



「そういうことじゃなくて。直接渡そうかとも思ったんだけど、家も携帯も知らないし。でも、ショットバーだといつも友達に囲まれてるから、声掛けたら悪いかなぁ、って」

「あぁ、そっか。ごめん」


コウは息を吐き、僅かに視線を落としながら、



「何か俺、すげぇ焦ってさ。だせぇな」

「だね」

「『だね』とか言うなよ。そこは、そんなことないよ、とかだろ」

「『そんなことないよ』」

「棒読みで言いやがって」


コウは呆れたように笑っていた。

人の往来の中心で立ち尽くす私たち。



「あ、えっと、飯食ったか? まだだったら、一緒にどっか行かねぇ?」