嬉しくて、嬉しくて。

私は泣き笑いでくしゃくしゃになった顔で、「はい」と言った。


コウはそんな私にキスをした後、私の左手を持ち上げる。


薬指にはめられた指輪。

私も同じように、コウの左手の薬指に指輪をはめてあげた。



「愛してる」


抱き締められた。

ぬくもりが溶け合う。



「何かこれ、めちゃくちゃハズいな」


今更のように照れたことを言うコウ。

コウの心臓はバクバクしてた。


星空の下でのプロポーズ。



「でも私、夢見てるみたい。すっごく嬉しかったよ」

「だってそりゃあ、俺、3日3晩、寝ずにシチュエーションを考え抜いたもん」

「マジで?」

「マジで、マジで。でも、ほんとは夜景とか見ながら渡すはずだったのに、酔っ払い過ぎてこんな場所になっちまった。失敗した」

「ちょっと、『失敗した』って何よ! 私の感動を返してよ!」


怒る私を気にすることもなく、すっかり仕事を終えたみたいな顔してるコウは、ケラケラと笑う。

腹の立つ男だ。


私は不貞腐れながら、左手にある、冷えた金属に指で触れた。



触れてるうちに、どんどんそれが愛しく思えてくる。



「ありがとね、コウ」


ふたりでひとつ。

まるで、そんな証のように思えて。


これでもう絶対に、私たちは離れない。