本当の俺を愛してくれないか?

「宏美、お昼行こうか」


「うん」


お昼休みになり財布を持ち、咲花と二人社員食堂へ向かう。


「咲花、さっきはありがとう。つい昨日のことを思い出しちゃってさ」


「やっぱりね。そんなことだろうと思ったわ」


注文し席に着くと、同じ開発部の先輩達が近付いてきた。


「ねー、私達も一緒してもいい?」


「あっ、はいどうぞ」


「ありがとう」


珍しい...。同じ部署とは言え、今まで一緒に食べたことなんてなかったのに。

それは咲花も同じだったようで私をチラチラと見ていた。


「ごめんね、お邪魔しちゃって。ちょっと小林さんに聞きたいことがあって」


「えっ...。私、ですか?」


なっ、なんだろう?


「昨日、小森さんと何かあったの?」


「えっ?」


昨日と言われて思い浮かぶのは最上部長だけ。なのになんで小森さん?
そういえば、最上部長も言ってたような気がする。
私と小森さんがクリスマスに出掛けるって噂で聞いたって。
もしかして、それ!?



「 ちっ、違います!私、小森さんと昨日出掛けたりなんてしていません!」


「じゃあ出掛ける前に喧嘩とかしたの?」


喧嘩?


「だって今日はいつもみたいに小森さん『宏美ちゃん』攻撃しないからさ。喧嘩したか振られたかしたのかなって思って」


あれ...。そういえば確かに。今日はまだ一度も小森さんと話していない。


「あの!皆さん勘違いされているようですけど、宏美と小森さんは付き合ってなんていませんよ?」


「えぇー。本当に?」


「はい。宏美にはちゃんと他に好きな人がいますし」


咲花...。


「それに見てたら分かるじゃないですか。小森さんただ宏美をからかっているだけだって」


「まぁ、確かにそう言われてみればそうかも...」


「小森さんってそんな感じの人だもんね」


良かった。信じてくれて。

咲花を見つめてお礼の合図を送ると、咲花は気にするなって。


だけど本当に先輩の言う通り。
いつもみたいに声を掛けてこない。

単に忙しいから?
それとも、もう私には飽きちゃったから?

...申し訳ないけどそれだったらいいな。
だって私は小森さんの気持ちには答えることなんて出来ないから...。