本当の俺を愛してくれないか?

「...ねぇ、咲花。私、さ。頑張ってみちゃってもいいかな?」


「えっ?」


こんなに沢山最上部長のことを知ってしまって、好きになってしまった。


「私、他の人に取られたくない。...菜々子さんよりも一杯私のことを好きになってもらいたい」


「宏美...」


見ているだけなんて嫌。
同じ会社の上司と部下なんて関係嫌。
ただ最上部長の秘密を知っているだけの人なんて嫌。


「最上部長の一番になりたい...」


昨日話してて強く願ってしまった。

最上部長のこと、誰よりも分かって受け入れられる一番の人になりたいって。


「全く。やっとやる気になったか。私はけっこう前からそう思って欲しかったんだけど」


「咲花...」


「ここまで来たら頑張るのみでしょ!...頑張れ」


「...うん!」


早朝の誰もいない更衣室。私は思いっきり咲花に抱き着いた。


「咲花、大好き」


「あはは!何よ、それ」


本当に大好き。いつも私の話を聞いてくれて励ましてくれて。
そしてそばにいてくれる咲花が大好きだよ。


咲花に出会えて本当に良かった。


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「小林さん、ここ間違ってるから直してすぐ提出して」


「はっ、はい!すみません!」


いつもと変わらないオフィス。
変わらない仕事内容。
変わらない最上部長...。


私だけ、か。
昨日のことが忘れられなくて、こんなにもドキドキしちゃってるのは。


しかも企画書の変換ミスとか有り得ないし。

パソコンを開きつつ、本日何度目か分からない最上部長を盗み見。


...あぁ。やっぱり最上部長格好いいな。
あんな人があんなに美味しいケーキを作れちゃうんだよ?

みんなは知らないけど、私だけが知っている秘密。

ちょっとした優越感に幸せな気持ちは更に増すばかり。


「宏美ー。顔歪んでる」


去り際にそっと呟いていった咲花の言葉に慌てて顔を引き締める。


っとと!危ない危ない。
今は仕事中なんだから、ちゃんと仕事に集中しないと!

自分に言い聞かせさっき渡された企画書を直し始めた。