本当の俺を愛してくれないか?

「待ってて。今ドライヤー持ってくるから」


そう言って脱衣室へと向かう最上部長をただ見つめるだけしか出来なかった。


もっ、最上部長...。
私、心臓がいくつあっても足りないくらいです!
ちょっと神様ってばいくらクリスマスだからって私に幸せを与えすぎていませんか!?


「小林さん、これ使って」


「あっ!ありがとうございます!」


「そろそろスポンジが焼き上がる頃だから、早く乾かしちゃってね」


「えっ...。焼き上がるって...?」


もしかしてさっきから香るこの甘い匂いって。


「うん、お詫びにしては安上がりで申し訳ないんだけど、ケーキ作ろうと思って。クリスマスだしな。あっ、小林さん、ケーキ大丈夫?嫌いじゃない?」


「全然嫌いじゃないです!むしろ大好きです!!」


嘘みたい。最上部長がケーキを焼いてくれて、それを食べられるなんて。


「良かった。もう少し待ってて」


そう言ってキッチンへと戻っていく最上部長。


私は貸してもらったドライヤーで髪の毛を乾かしている時も、終わった後もキッチンでケーキ作りをしている最上部長から視線を反らすことが出来ずにいた。


...なんでこんなに素敵な最上部長に引く人なんているんだろう。

手際よく楽しそうにケーキを作る最上部長は、最高に格好いいのに。


でも、それでもいいや。
こんなに格好いい最上部長を知っているのは私だけでいいもん。

誰にも話したくない。こんなに素敵な一面を持つ最上部長のことを。


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「美味しい...。最上部長!これやばいです!最高に美味しいです!!」


「それは良かった」


最上部長が作ってくれたのはシンプルなイチゴのショートケーキ。
だけど見た目も味もお店で出せるくらい美味しくて、びっくりしてしまった。