ゆっくりと開かれたドアの先には、綺麗に整理整頓されたリビングが広がっていて。
おしゃれなインテリア家具。所々に可愛い小物。
白くて大きなテーブルの上にはパソコンと書類の山。
そしてその奥のキッチンから薫る珈琲の香りと、見える人影。
「...えっ。嘘」
思わず漏れてしまった声。
そんな私の声に当然気付かれて。その人はゆっくりとこちらに振り返る。
「あっ、よかった。目が覚めた?」
部屋着で、髪も下ろしたままの姿でキッチンに立っているのは、間違いなく最上部長で。
「今、起こしに行こうと思っていたんだ。小林さん、珈琲飲む?俺と同じ甘めでいいかな?」
えっ...。えっ!えぇっ!?
「もっ、最上部長!?」
嘘!これは夢じゃなくて!?本当に現実なんだよね!?
ってことは間違いなく私ってば、最上部長の家に泊まってしまったってこと?
しかもベッドを使わせてもらって。
有り得ない現実に酔いなんてすっかりさめてしまって。
立ちすくむ私とは対照的に最上部長は、本当に私の分まで珈琲を淹れてくれた。
「どうぞ」
そう言ってテーブルの上に置かれたのは、マグカップに入った淹れたての珈琲。
「あっ、ありがとう、ございます」
頭の中はパニック状態なのに、最上部長に言われるがままソファーへと向かう私。
そして渡された珈琲を一口飲む。
「...美味しい」
「それは良かった」
思わず出てしまった言葉。だって本当に美味しかったから。
それに対して最上部長は嬉しそうに笑ってくれて。
いつもとは違って部屋着で、髪を下ろしているからかな?幼くて可愛く見えてしまうのは。
夢心地のまま珈琲を飲んでいると、見覚えのあるマグカップ。
...あれ。これってさ。もしかして...。
可愛いデザインで私好みで。そして、妙に印象に残っているデザイン。
間違いない。これは以前最上部長が彼女さんに買ったプレゼントのマグカップだ。
って!!私ってばなんで今まで気付かなかったの!!
最上部長には綺麗でラブラブな同棲中の彼女がいるじゃない!
さーっと血の気が引く。
せっかく淹れてくれた珈琲だけど、飲み干さずそっとテーブルの上にマグカップを置く。
「...小林さん?」



