「で?名前は?」

「……」

「は?」


黒峰は、あたしに生徒証明書を見せてきた。

そこには…

 “黒峰要”。


「…ヨウ?黒峰ヨウ、って名前なんだね?」

「本当に、馬鹿だな。」

「あたしは、馬鹿じゃない!」

「かなめ。」

「え?」

「黒峰かなめ。」

くろみね、かなめ…?


「ヨウじゃなくて?」

「今まで会ってきた奴で…
 キミだけだ、その読み方したの。」

「あたし、だけ?」

「ああ。馬鹿のお前だけ。」

少しずつ…
あたしの呼び方、酷くなってきてません?


「漢字苦手だから、しょうがないじゃん!」

「小学生でも分かるよ、こんな漢字。」

…つまり こういう事か?
高校3年のあたしは 小学生以下、ってこと?
人を馬鹿にするのも いい加減にしろっての!

「アンタが気に入らないから、あたしは“ヨウ”って呼ぶからね!」

「勝手にしろ。」

…ぁ、意外だ。


「で? 用事、って何?」

大事なことを 忘れてた。