「櫻井樹は…
 今日、休みだな。」

イツキ…。

歌手としての最初のレコーディングで…
朝、学校を帰ったのかな?

どうして、突然…
“歌手デビュー”に なったの?

以前まで…
仕事の事とか、沢山教えてくれていたのに…。

「次、桜井。」
「はい!」

優子は 明るい返事をし、席を立ちあがる。

「桜井優子です。
 特技は、特にありませんが、 あえて言うなら…歌です。」

「歌、か…。
 今 此処で、歌ってもらえるか?」

「少し恥ずかしいですけど…
 頑張って、歌ってみますっ!」

すると、優子は 大きく息を吸って…
歌い始めた。

静かな教室の中、
心安らぐような優子の声だけが響き渡る。


『 行きたいよ 君のところへ

  今すぐ かけだして 行きたいよ

 真っ暗で 何も見えない 怖くても大丈夫

 数えきれない星空が 今もずっと ここにあるんだよ

  泣かないよ 昔 君と見た

     きれいな空だったから 』


大塚愛の『プラネタリウム』。


「「「 …… 」」」

みんな…
優子の歌声に 聞き惚れていた。
女子。 男子。 性別問わず。

「優子ちゃん、凄い綺麗だったよ!」
「美人なのに歌も上手って、神様不公平やろー!

そう。
優子は、顔が 可愛い。
「美人」と言われても、良いほど。

クラスの女子の一人が 言った。

「歌手になったら!?」