「彼女が居たって、王子のカッコよさは変わらないでしょ?黒岩先輩と一緒に歩いていても、クールフェイスを崩さない!あれがまた、ファンには…たまらないのよ!」


「…そういうもんなのか?」


「そういうものなのっ!」


亜弓ちゃんは、気合いの入った声でバシッと答える。


亜弓ちゃんの王子に対するファン精神が、ここまで強かったとは思わなかった…。


ビックリして瞬きを繰り返す。


淳也を見ると、ポカンと口を開けて驚いていた。


「えっ、紗姫も橘君もどうしたの…?二人して、驚いた表情してるけど…」


「いや、神谷の新たな一面を見ちまったなぁ…と思って。なっ、紗姫?」


「うん…。亜弓ちゃんが皆辻君のことを…そんなに熱く話すところ、初めて見た…。」


「そっ、そうだっけ…?なんだか…そう言われると恥ずかしくなっちゃうよ…。」


瞬く間に、頬を赤く染める亜弓ちゃん。


その姿が可愛くて、笑みが零れた。



いつものように、和やかに始まっていく一日。


まさか、放課後に…あんな最悪な出来事が待ってるなんて…


今の私は、知る由もなかった…。