ぎこちなく呟くと、光琉は少し首を傾げる。


「聞こえねぇ。もう一度、言え。」


「えっ!?今の、聞こえなかったの…?」


「ああ。」


こんなに近距離で聞いてるくせに、聞こえないなんてことあるの…?


不満が燻ったけれど、文句を言っても状況が変わるわけじゃない。


そう察した私は、もう一度…言葉を発した。



「光琉…。」


先ほどよりも大きな声。


今度は光琉の耳にもハッキリ届いたのか、名前を呼んだ瞬間…満足げに頷いた。


「上出来だ。これからは、そう呼べよ?」


その言葉と共に浮かべたのは、柔らかい笑顔。


まさか、そんな穏やかな表情をするなんて思わなかった私は、かなり驚いてしまった。


こんな温かみのある笑顔になったりもするんだ…。


でも、どうして…そんなに嬉しそうなんだろう…?


私の手を引いて再び学校へと歩きだす光琉を見ながら、頭の中には疑問符がフワフワと漂っていた。