「なんだよ、その声。紗姫は俺の女なんだから、一緒に学校に行くのは、当たり前のことだろうが。」


いやいや、当たり前じゃないでしょ。


私は、皆辻君の彼女のフリをしてるだけ。


何も、朝から一緒に登校しなくてもいいと思うんですけど…。


不満な気持ちを抱いていると、後ろの方で何やらヒソヒソと話す声が聞こえてきた。


ゆっくりと振り向く。


すると、いつの間にか1階に降りてきていた梨帆が、お母さんと一緒にリビングの入り口から、嬉しそうにこちらを見ている姿が目に映った。


「何見てるのよ…!」


「お姉ちゃんってば、照れちゃって…!」


「ふふ、紗姫の照れる気持ち…分かる気がするわ!だって、とってもカッコいい彼氏だもの!」


別に、照れてないし…皆辻君は彼氏じゃないんですけど…。


キャーキャーはしゃぐ、お母さんと梨帆。


盛り上がってる二人に苦笑いしてしまった。


「紗姫、早く朝ご飯食べて支度しなくちゃ!」


「そうだよ、お姉ちゃん!彼氏を待たせちゃダメだって!」


「ち、違うの!この人は…」


“彼氏じゃない”


そう言おうとした瞬間、私は皆辻君に後ろから抱きしめられてしまった。