「ねぇねぇ、今日の王子もスゴくカッコいいよ!今、隣のクラスに行って見て来ちゃった…!」


「そ、そっか…。」


私は、ハハ…と苦笑いを浮かべた。


そう…。


何を隠そう、亜弓ちゃんは皆辻君の大ファン。


皆辻君とは同じ中学だったらしいんだけど、その頃からのファンらしい。


毎朝、隣のクラスに行って皆辻君を見てくるのが、亜弓ちゃんの日課だ。


はしゃぐ亜弓ちゃんは可愛くて微笑ましいんだけど、あんな無愛想男のどこがいいんだろう…。


いつも疑問に感じる私がいたりする…。


「朝から目の保養になっちゃった…!今日も一日頑張れそう!」


「よ、良かったね…亜弓ちゃん。」


ぎこちなく言葉を返すと、亜弓ちゃんはジーッと私の顔を見つめた。


「紗姫、どうしたの?なんだか、沈んでるみたいだけど…。」


「実は…さっき校門の少し手前で、女の子たちに囲まれて登校する皆辻君のこと見ちゃったんだよね…。しかも目が合って睨まれたし…。」


最悪…としか言い様がない。


暗い気分の私とは裏腹に、亜弓ちゃんはキラキラと目を輝かせた。