王子様の危険な恋愛領域


保健室と同じように簡易ベッドが二つ置かれた清潔感のある空間。


部屋の奥の窓際には、テーブルとソファーもある。


その窓の向こうには、大きな桜の木。


風に吹かれて、葉が気持ちよさそうに、そよいでいるのが目に映った。


「ここ…なんの部屋?」


キョロキョロと部屋を見回すと、皆辻君は面倒くさそうに溜め息を零した。


「体調の悪い生徒が多くて、保健室のベッドだけじゃ足りない時に使う予備の部屋だとさ。でも…使うことは殆どねぇから、俺が避難部屋として使ってる。」


「避難部屋…?何から避難するわけ?」


「キャーキャー騒ぐ、うるさい女たちから。」


あっ、そう…。


みんな、皆辻君が好きだから騒いでるってのに…。


本当に性悪…。


心の中で黙々と愚痴っていると、皆辻君は掴んでいた私の腕を離して、部屋の奥へとスタスタと歩いていく。


ソファーに腰を下ろすと、入り口で突っ立っている私に不満げな視線を向けた。


「今、俺のこと…性悪なヤツとでも思ってんだろ?さっきみたいに。」