王子様の危険な恋愛領域


ひぃぃぃっ、皆辻君!!


私たちの後ろにズンと立って、無表情で見下ろしている。


その姿に、口をパクパクさせながら驚いた。


い、いつの間に!?


心臓、飛び出るかと思った…。


ガチガチに固まっていると、皆辻君は私の腕を掴んで立ち上がらせた。


「紗姫、行くぞ。」


「えっ、ちょっと待ってよ!急になんなの…!?」


「お前に話がある。」


「で、でも…帰り支度だって、まだしてないし…」


机の横に掛けてあるバッグを見ようとして視線を向けると、私の目の前にバッグが差し出された。


「はい、バッグ!紗姫の帰り支度…私が代わりにしておいたから、早く王子と行きなよっ!」


「えぇっ!?」


亜弓ちゃんの早業に、大きな声を出してしまった。


そんなこと…してくれなくてもいいのに…。


亜弓ちゃんってば、皆辻君に協力的すぎるよ…。


浮かない気持ちで、バッグを受け取った。