「一躍、有名人だな…紗姫。」


「全然…嬉しくないけどね。」


隣の席で苦笑いしている淳也に、私はガクリと肩を落としながら答える。


こうなったのも、全て皆辻君のせいだ…。


どんより沈んでいると、亜弓ちゃんが私の机に両手をついて、顔を覗き込んできた。


「もう!紗姫ってば、なんで暗くなってるのよ!王子に告白されるなんて、女の子たちの夢なのよ?」


「そ、そんなこと言われても……。」


別に、私にとっては夢でも何でもない…。


っていうか、今のこの状況が夢であって欲しい…。


「私、王子が紗姫に告白した瞬間、ビックリして鳥肌立ったよ!だって、普段…殆ど無口の王子に、あれだけ喋らせたんだから!スゴいわ、紗姫!快挙よ、快挙。」


亜弓ちゃん、午後の休み時間の都度、同じようなこと言ってるよ……。


あんなの、快挙でもなんでもないってば…。


キラキラとした目で訴えられ、私は苦笑いを浮かべた。