王子様の危険な恋愛領域


“キャーッ”


聞こえてきた、女の子たちの大きな歓声。


何事かと思い、中庭の入り口の方を見た私。


思わず、うっ…と言葉を詰まらせてしまった。


『王子、めちゃくちゃカッコいいんですけど!』


『こっち向いて、王子っ!』


そう、目に映ったのは…たくさんの女の子たちに囲まれている皆辻君の姿。


飛び交う黄色い声にも全く動じることなく、無愛想なままだ。


なんで、こんなところにいるのよ…。


せっかく気持ちよくお昼ご飯を食べていたのに…。


どんよりと沈む私とは対照的に、亜弓ちゃんはとても嬉しそうだ。


「王子とお昼休みに会えるなんて、感激っ!」


キラキラとした目で皆辻君を見ると…


「私、ちょっと近くに行って来るね!」


「えっ、亜弓ちゃん!?」


お弁当箱をベンチに置いた亜弓ちゃんは、あっという間に皆辻君の方へと駆け出して行ってしまった。