「“離せ”って言ってんだろ。」
怒りが込められた冷たくて低い光琉の声に、背筋がゾクッと震える。
光琉は、とてつもなく不機嫌そうに淳也を睨んでいた。
「アンタ、紗姫が戸惑ってんのが見えねぇのかよ。」
「えっ…」
光琉の言葉に、淳也が私の方に視線を移す。
抱きしめていた腕の力が緩んだ、その瞬間…光琉が私の肩に触れる。
そして、強い力で一気に光琉の胸の中へと抱き寄せられてしまった。
「紗姫は、返してもらう。」
「………っ…」
淳也は眉をしかめて光琉に鋭い目を向ける。
少し沈黙した後、光琉は私の体を離して手を握った。
「紗姫、帰るぞ。」
「えっ、あ……」
スタスタと足早に歩き出す光琉。
屋上のドアを荒々しく開けた時だった。
「紗姫っ…!」
淳也に名前を呼ばれて振り向く。
視線は真っ直ぐ私に向けられていた。
「俺っ…紗姫が好きだ。」


