王子様の危険な恋愛領域

「光琉、離れてよ!」


「別にいいじゃん。」


「よ、よくないってば!」


モゾモゾと動く私を、一向に離そうとしない光琉。


これじゃあ、家にも入れないよ…。


ガックリとうなだれていると、玄関のドアがガチャッと開いた。


「あら、外から賑やかな声が聞こえてくるなぁ…と思ったら、紗姫も帰って来たのね!それに皆辻君も!」


中から顔を覗かせるお母さん。


私と光琉を見るなり、嬉しそうに顔を綻ばせた。


「こんにちは。」


光琉は、私を抱き寄せたままお母さんに挨拶をする。


それよりも、まず先に…離れて欲しい…。


お母さんや梨帆に見られている恥ずかしさを必死に堪えながら、光琉に念を送る。


すると、思いが通じたのか、ようやく光琉が私からゆっくりと離れた。


「じゃあ、俺は…そろそろ失礼します。紗姫、また明日な。」


「う、うん…。」


笑顔の光琉に、ぎこちなく手を振る。


光琉が歩き出そうとした、その時だった。


「あっ、皆辻君…待って!」