胸元をさすりながら、はぁ…とまた溜め息を零していると、ガチャッと部屋のドアが開く。


「お姉ちゃん、出掛けるの?」


中に入って来たのは、梨帆だった。


「そ、そうだけど…。梨帆!部屋に入る時はノックして…って、何度言えば分かるのよ…。」


「ごめんごめん、次からは気をつけるから!」


パンッと両手を合わせて謝る梨帆だけど、反省している様子は、一切ない。


まあ、いつものことだけど。


「お姉ちゃん、今日は…お友達と買い物?」


「う、ううん…。」


私は首を横に振る。


亜弓ちゃんとショッピングだったら、喜んで行くのにな……。


そう思っていると、梨帆はニヤリと笑った。


「あ、それじゃあ…もしかして、あのカッコいい王子様みたいな彼氏とデート?」


「えっ!?」


梨帆の“王子様”という言葉に反応してビクッと肩が上がる。


「ふ~ん、そっかぁ~。お姉ちゃんと王子様、順調に進んでるんだね!」


「ち、違うっ!違うの!」


ニコニコと嬉しそうな梨帆に、すかさず否定の言葉を発した。