王子様の危険な恋愛領域


「俺、先輩と付き合うつもりは全くねぇから。恋人のフリしてれば、女除けになると思っただけだし。」


「えっ…」


「っていうか、先輩…鬱陶しい。隣にいるとキャーキャーうるせぇし、ベッタリくっつこうとするし、かなり…うざい。恋人のフリすんのも限界なんだよ。」


皆辻君の鋭い視線が黒岩先輩に注がれる。


みるみるうちに、黒岩先輩は泣きはじめてしまった。


「ひっ、ひどいよ…。王子のこと大好きなのに…。」


「ひどいのは、どっちだよ。先輩、随分…遊んでるみたいじゃん?」


「…………っ…」


その言葉に、黒岩先輩は唇をキュッと噛み締めたかと思うと……


皆辻君に背を向けて、こちらの方へと走ってくる。


ど、どうしようっ…!


会話が終了したのは、とてもありがたいけど、こんなところで突っ立っているのを先輩に見られたら、何言われるか分からないよ…。


怒られそうな予感。


オロオロしていると、黒岩先輩は私のいる廊下の方には曲がらず、そのまま真っ直ぐ走って行ってしまった。