「お前、相変わらず…“超”がつくほど鈍いな。」


「えっ…?」


鈍い…って、どこが?


眉をしかめながら首を傾げると、光琉は少し気恥ずかしそうに頭を掻いた。


「態度が変わって当たり前だろ。あの男と紗姫が話してるところなんて見たくねぇんだよ。」


「へ…?」


「……だから、すげぇ嫉妬した。」


やっと私の耳に届くぐらいの小声で、呟いた光琉。


私からフィッと視線を逸らしてしまった。


「嫉妬?ど、どうして…?」 


「そんなの、決まってんだろうが。俺が紗姫を独り占めしてぇからだよ。」


「私を…!?」


「ああ。それぐらい、俺の心を掴んでるんだよ…紗姫は。」


照れくさそうな表情で話した光琉は、私に背を向ける。


「じゃあ、次も続けて試合あるから行って来る。しっかり見てろよ。」


低い声で言い残して、足早にグラウンドへと走って行ってしまった。


私、ただの女除けのはずでしょ…?


それなのに、嫉妬とか…独り占めしたいとか…心を掴んでるとか……なんなのよ。


「…………。」


どうして、私…胸がドキドキしてるの…?


速くなる鼓動の理由が分からなくて、制服の胸元辺りをキュッと握った。