「それ以上、あの男の名前を言ったら…無理やり唇を塞ぐぞ。」


「!?」


それって、つまり…
ガムテープか何かで喋れないようにさせるってこと…?


なんて物騒なことを口にするんだろう、この人は。


冷や汗が背中をつたった。


とりあえず、光琉の前では淳也の名前を口にしない方が良さそうだな……。


その都度、こんな風に不機嫌になられたら…たまったもんじゃない。


これから気をつけなくちゃ…と心の中で感じながら、しばらく黙っていると、光琉はゆっくりと顔を離した。


「紗姫が名前で呼ぶ男は、俺だけでいい。」


真っ直ぐで、真剣な眼差し。


まだ少し、怒っているような低い声。


どうして…そんな顔するのよ…。


疑問を抱いていると、光琉は怪訝そうに眉を寄せた。


「何か、言いたげな顔だな。」


「あ、えっと…なんでそんなに怒ってるのかな…と思って。」


「は?」


「だって、試合前も試合中も機嫌が良さそうだったのに、さっきから急にイラついてるじゃない…。何か、あったの…?」


おそるおそる訊ねると、光琉は盛大な溜め息を零した。