「お祭り?」

「そ、七夕祭り。短冊に願いごとを書いたり、屋台出したり」


脇の小道を今日は通り過ぎて、まっすぐ商店街を突き抜けていく。


「七夕って、もうすぐだよね」

「でもお祭りは、旧暦に合わせて8月にやってたらしいよ」

「へえ、8月だったら夏休みだから、みんなのお休みにも合わせたのかな」

「昔って夏休みってあったのかな? もしかしたら、盆踊りとかとも一緒にしてたのかも。地域のちっちゃいお祭りだったみたいだし」

「ふうん……でも、なんでなくなっちゃったんだろ」


わたしが前住んでいたところにも、地元民だけが参加する小さな古いお祭りがあった。規模が規模だけにそう多く人は集まらなかったけれど、なんだかんだ細々と、いつまでも続いていた。


「ばあちゃんは、新しい土地開発とかで随分人が入れ替わっちゃったからって言ってたよ。古くからここに住んでる人もいるけど、うちのばあちゃんが子どもの頃に比べると、結構町の印象は変わっちゃったみたい」

「わたしの家の辺りも新しく開発されたところだもんね。この商店街も古く感じるけど、昔から住んでる人にはそうじゃないのかな」

「そうかもね。この商店街なんてあたしらが生まれるより前にできてるけど、ばあちゃんたちからしたらたぶん新しくできた場所なんだろうね」


紗弥が道の真ん中に立つ古い石の像をこつんと叩く。石像の下には「記念碑」の文字と何十年も前の日付。この商店街ができたときの記念の像だ。

わたしから見ればずっと昔のものだけど、この町にとってはそうじゃないのかもしれない。変わってきた景色と人。

常葉はずっと見てきたのかな。長い間あの神社から、この町の風景を。


『時代の流れだ。もう人は、神などいなくても、自らの力で生きていけるようになった』


どんな気持ちで見てきたんだろう。変わっていくものを、変わらない場所から、常葉はどんな気持ちでずっとひとりで見守ってきたんだろう。