ゴッドネス・ティア

一方、レオナの方はというと、とっくに痛みはひいていた。


だが、いつ話にはいろうか、いや入るのはめんどくせーなぁなどと、またなんともやる気のない考えを駆け巡らせながら俯いる。


コツッ…コツッ…


ふと、耳を傾けると扉の向こうから靴音が聞こえる、ような気がした。


コツッ…コツッ…コツッ…


次第に音が大きくなって、近付いて来ているのがわかる。


コツッ……………


……扉の前で靴音が止まった。


耳に神経を集中させていたせいか、靴音が消えると同時に先程の女二人とアランの声が入ってくる。


耳を塞ぎたくなるほどの黄色い声がレオナの上を飛び交い、
あまりのうるささに頭を押さえる振りをして耳を塞いだ。



「何をしていらっしゃるのですか?」



黄色い声が飛び交う中、鈴の音のような声が聞こえた。


とても美しい細い声に黄色い声がピタリと止む。


言葉は控えめなのだが、堂々とし、何故か懐かしい気持ちになる。


邪というものが、清らかに流されていくようだ。


そんな爽やかな気持ちになっていると、女二人が同時に素っ頓狂な声をあげた。



「ひぃいぃぃいいぃいっ!!」



……清らかな心が激しい音を鳴らして崩れたような気がする。


しかも、驚きと恐怖が混じりに混じったような女らしかぬ不様な悲鳴。


どうやら、驚いた原因は靴音の人が現れたことみたいで、
清らかな声の持ち主が実はすんごい不細工だったのかな、なんて無駄な考えを巡らせてみた。

声は綺麗なのになぁ。


せっかくだから、女二人組が叫ぶ程の顔をおがんでおこうと、そーっと気付かれぬ程度に顔を上げた。



「そこに座っているかた、大丈夫ですか?」



顔を上げた時には例の人が心配そうにこちらを見ていた。


最初に目に入ったのは吸い込まれるような大きく碧い瞳。

次に肩までのびたサラサラのプラチナブロンドの髪。

高くも低くもないちょうどいい高さの調った鼻。

少し薄めの唇。

ほんのりピンクのかかった純白の肌。


…綺麗な人だ。


と、思う前にふとレオナは首を傾げた。