「なんか、全体的に暗いな…」



村へ入った二人は寄り添うように肩を寄せて歩く。


まだ、夕日は沈んでいないはずなのに空は暗い。


そんなことはいいのだ。


暗いとか、寒いとか、怖いとか、眠いとか、痛いとか…そういう問題ではない。


この村は…


何故誰一人歩いていないんだ…?


今日の夕飯の買い物や、子供達が遊び帰るこの時間帯。


人影一つないなんておかしい。


二人が不気味だ、と内心震える中、一人、弱音を吐いた。



「華蓮ちゃん、なんか怖いね…」



ル・メイはがっちりと華蓮の腕を持ち、もう離さないというかんじだ。


そんなル・メイを華蓮は嘲笑する。



「ハッ、こんな事ぐらいで怖がってんじゃねぇよ!」



その華蓮の発言にル・メイは不愉快そうに顔を歪めた。



「なにそれ、自分だって怖いくせに!!」



「騎士なんだからこわくねぇよ!」



「騎士は関係ないでしょーーー!」



また、いつも喧嘩が始まった。


今日で何度目だろう。



「騎士の自覚持て!」



「それさっきも聞いたし!」



「言われねぇようにしろっつってんだよ!!」



「言わなきゃいーじゃん!!」



「んだとゴラァ!
調子に乗ってんじゃねえ!!」



とうとう殴り合いに発展しようとしたとき…



ギイィィィィイイッッ



近くの家のドアが古い金属音を起てて開かれた。



「ヒッ!!!!」



喧嘩していたのが嘘のように仲よさ気に肩を寄せ合う二人。


そして、家の中から声が響いた。



「うるせぇなぁ…満足に寝れねぇだろぉ?」