「ん。」



一文字の言葉を聞いた後、レオナの前にニュッと長い腕がのびてきた。


手には何か持っている。


この香ばしい匂いは…!



「イカ焼き!!
え、何、それ俺にくれんの?よっしゃ〜!」



上機嫌でイカ焼きを受け取った。



「あんたは食わねぇの?」



ご機嫌なのかレオナには珍しい明るい笑顔でスノーリアを振り返る。


だが、すでに口の中には大きなイカ焼きが入っていた。



「むぉぅ、はべへひふ」


「何言ってんのかわかんねぇよ」


「あ、ずるーい!僕にもちょうだーい!」



ヒサノと踊り娘に夢中だったアランは香ばしい匂いに気付き、スノーリアに手をのばす。



「ん。」



先程と同じようにアランに手渡す。



「あ、ヒサノのぶんも!僕が渡すから!」


「ん。」



ヒサノは相変わらずまだ踊り娘に夢中だ。


そんなヒサノのところへ走って行き、イカ焼きを手渡すアランが見える。



「まだ、見るのか?」



ようやく、口の中が空っぽになったスノーリアがレオナに尋ねた。



「別に俺はな…ヒサノが見たそうだけど、もう行くか?」


「いや、今日はもう宿に泊まろう。
これから街を出てももう宿はないからな。明日、出発だ」


「………休日ってことか?」


「そうだ」


「よっしゃ!
…でもさ、休日たってあんたは何をするんだ?」


「……………」



スノーリアは黙り込んだ。

考えているらしい。



「…とにかく、寝る」



どうやら彼は暇らしい。

それしかやることがないようだ。



「寝る、かぁ…それもいいかもな…」


「では、私は先に戻っているぞ。暗くなるまでには帰っておけ」



俺は餓鬼か?!とツッコむ前にスノーリアはさっさと宿へ帰って行った。