ギャハハ、と兄ちゃん達が盛り上がったと同時に、険しい顔をしたリンが一つ息をついた。

だが、またうーん、と考え初め、首を捻って腕を組む。そして何か決心がついたのか、力強く頷いた。





「なぁ、兄ちゃん達。アタシを買わないかい?」


いつもと同じヘラヘラした表情で言った。
その場に少しの沈黙が下りた。

しばらくすると、兄ちゃん達から歓声が上がる。
その声にレオナはやっとその言葉の意味を理解した。



「ちょ…リン何言って…」


「いいね~!けどな姉ちゃーん、俺ら金、ないんだわ」



レオナの言葉を遮って、リンに近づく兄ちゃん達。
あっという間に数人の兄ちゃん達に囲まれるリン。
じろじろと厭らしい目で見られている。



「金はいらない。そこにいる二人を逃がすことを約束してくれたら良い」


ニッと口角が上がる。余裕そうには見えても、きっとそうではない。

レオナは叫んだ。



「お、まえ、ふざけんなよ…!お前何自分売ろうとしてんだよ…!」


「そうですよリン…!そんなことやめてください!」



震える声。ヒサノはもう泣きそうだ。

自分を売るなんて、そんなことやめろ。そう言うと、先程までヘラヘラしていたリンの目付きが変わった。



「うるっさいんだよアンタら…仕方ないだろ。ゴタゴタ言うな」



どうやら、兄ちゃん達と話し合いが終わったらしい。兄ちゃん達はリンの腕をとり、場所を変えるのか奥へ連れていこうとしている。
リンはキッとこちらを睨んでいた。今まで見たことのない表情だった。
だがその後にフッと力を抜き、力なく笑った。



「慣れてるんだよ。こういうことはさ…」




――だから任せて。






そう言い残してリンは兄ちゃん達と共に小路の奥へ消えた。