「へへ…俺等はここらの小路によく溜まってんだ…。近道して追い付かせてもらったぜ坊主…」


「………」


「おいおいそんな顔すんなよなぁ。別に殺すだなんて言ってないだろーが。大人しくしてくれりゃ何もしないってぇ…」



ニヤニヤと口元を歪め、顔を近づけてくる。

しかしこちらは丸腰、しかも数も負けているし、男一人に女二人。

あちらは腰に何本か剣が差してあるし、こちらの勝ち目はゼロに等しい。否、ゼロだ。



「………まあ、とりあえずは…」


「――…ゔッ!」



兄ちゃんAが一際気味の悪い笑みを浮かべた瞬間、レオナの鳩尾に、一つ、拳が入った。

急な圧迫感と吐き気に、勢いよく膝をついて倒れた。

だがすぐに首根っこを掴み上げられ、左頬を強く殴られた。

口の中に大量の血が広がった。



「目には目を、歯には歯を、ってね」


「…ゲホッ…ゲホッ…!」


「レオナ…!な、なんてことするんですか…!」



あ、やばい。
お節介ヒサノが、兄ちゃんAに抗議を始めた始めた。

切実に、止めてほしいが、今痛みで声が出ない。



「おいお嬢ちゃん…反抗する気か?君自分が今どんな立場かわかってんの?」


「立場も何も…こんなことされて黙ってるわけにはいきません!」


「ヒサノ、止めな」


「いーえリン。これは見過ごせません!こんな非道徳的な行為…メルス様がお許しになりませんよ!」



止めに入ったリンを無視して、お節介ヒサノは相変わらずの態度で言い放った。

本当、勘弁してほしい。



「ぶっ!今の聞いたか?メルス様だってよ!君メルス様信者なんだ?」


「ぎゃっはは!神様信じてんだなー、かっわいー!なら君お願いしてみてよ、俺が大富豪になれますようにーって!!」


「お前が大富豪なんてムリムリ!メルス様でもムリだな!!」



どっと、周りが笑いに包まれた。

ほら、言わんこっちゃない。こいつらには何を言っても無駄なのだ。