「ったく、テメェは耳元でキャンキャンうるせぇんだよっ！！耳が痛ぇだろが！！」


「なんですってぇ？！
オナラなんて勘違いしたレオナが悪いんでしょ！
私のせいにしないでください！」


「その声がキャンキャンうるせーんだよっ！」


「なっ！失礼な事言わないで下さい！！」



二人の口喧嘩が始まった。

村を出てここに来るまで何度かあった二人の言い合い。

最終的にはヒサノの強引で強制的な平手打ちにより解決。


アランは慣れているのかあーあ、と楽しげに傍観し、慣れていないアンはオロオロと二人を交互にみる。



「二人共痴話喧嘩止めなよ〜」


「痴話喧嘩じゃない！！」



意地悪げに笑うアランに、打ち合わせでもしていたような息ピッタリの返事が返ってきた。

アランはやれやれと肩をすくませる。



「ぷっ…」



騒がしいこの空気のなか、ポツリ何かが聞こえた。

その音の原因である者に視線を移すレオナ達。


そこにはクスクスとかわいらしく口に手までそえて笑うアンがいた。


笑いが止まらないのか、お腹を抑える姿もとても女性らしく、気品が漂い、思わず三人は見とれてしまう。


しばらくすると、自分が笑われたと気付いたレオナとヒサノがまるで風邪でもひいたように顔を赤くした。



「な、何笑ってんだよっ！」


「そうですよっ！
そんなに私のお腹の音がオナラに聞こえたんですか！？」



二人はアンに迫るが、逆効果でアンの笑い声をさらに拡大させる。


しばらくそうしていると、やっとアンは息をついて、三人を見据えた。


二人がキョトンとアンを見ていると、アンは柔らかい優しい笑みを浮かべる。



「お腹、空いてるんですね」