恐る恐る隣へ視線を移すと、まだ少年とは呼べない幼さを持った男の子が声を押し殺すように泣いていた。
何故こんな所に子供が?

しばらく凝視していると、視線に気付いたのか男の子は真っ赤な顔を上げてこちらを見た。



「………げ」



このパターンはやばい。きっと自分と同じく迷子か何かだろう。このままだときっとお母さんを探そうの旅に出掛けてしまうことになる。


男の子はレオナを見上げて目を丸くした後、またくしゃりとかわいらしいお顔を崩した。
今度はこちらを向いてしくしくと泣いてくれるものだからまるで自分が泣かせているように見えるではないか。


急がなくてはならないが仕方がないので、レオナは男の子の視線に合わせてしゃがみ込んだ。



「……うっ…ふぇ…っ…」


「………母ちゃんとはぐれたのか?」


「…に、兄ちゃん…誰?」


「通りすがりの者さ。母ちゃん探してやるから泣き止め。ほら、これやるから」


「………?」



男の子の掌にそれを握らせ、開いてみろと促してみた。
不思議そうに首を傾げてゆっくりと掌を開く。

そこにはかわいくラッピングされた小さな飴玉が三つ程転がっていた。



「…飴…!」


「…そ。貰い物だけどよかったらどうぞ」


「いいの?…ありがとう兄ちゃん!」


「どういたしまして」


飴玉って凄い。
たった三つで子供を涙顔から笑顔にすることが出来た。
いやきっと、彼が子供だから出来た技だ。
子供って無垢だなぁ、と感じた瞬間だった。

彼はレオナにも飴玉を分けてくれ、二人で飴玉を嘗めた。
小さな手を握り、母ちゃん探しの開始だ。

ヒサノ探しのついでに、と来た道をまた歩き出した。