「つ、着いたぁ〜!」


レオナは達成感たっぷりで王都の石畳へダイブした。

石畳だから結構痛い。


その異様な行動に街の人々は冷たい視線を送ってくるが、そこのところは気にしない。



「……うん、疲れた」


「はぁ、足が筋肉痛ですぅ…」



後からついてきた二人も石畳に座り込んだ。

パオーレを出発後、三人は野を越え山を越え、馬を借りて落下し、船に乗って船酔いし、雨にうたれ、風に吹かれ、ボロボロになりながらやっとの思いで人間の国『ヒュネット』の王都『ラスカー』に辿り着いたのだ。


途中でフードを買って耳がばれぬようにしていたが、危ないときもあった。



「俺、ヒュネットなんて初めてだぜ…しかも王都!!」


「僕も」


「私もですー…」



ヒサノはほとほと疲れたようで、目の下に治るのに時間がかかりそうなクマをつくり、今にも倒れそう。

それで平気そうに微笑んでいて、…少し恐い。











そんなフラフラしているヒサノを尻目に、大通りに視線を移すと………向こうから何かが全力疾走してくるのが見えた。

自慢の視力を誇る我が目をこらして、その何かを見ると、全力疾走という言葉がぴったりな馬車が走ってきていた。



「危ねぇ馬車だなー…」



砂埃を巻き上げ、数秒後には自分達の前の大通りを素通りして行くであろう馬車を暢気に眺める。

だが、重大な事に気付いた。


ハッと、……眠くて働かない体と脳みそを無理矢理起こし、立ち上がった。

驚愕の表情を浮かべたレオナの視線の先には…、
大通りの道端で荷物運びに夢中になっている女性がいた。



「ヤバッ、……あのままじゃ…っ!」



道端で歩いていても、あの馬車のスピードと大きさでは巻き込まれることは目に見えていた。

その証拠に、その女性以外は恐ろしさ故に大通りには女性以外誰一人歩いてはいない。

レオナ達のいるちょっとした広間に避難しているようだ。


このままではあの女性は………。



「……チッ」



……一か八かで飛び出した。