そう言うと、おちょこに入った少量の酒を一気に含んだ。



「……あんたの弟子って他に誰かいたっけ?皐月だけじゃないの?」


「…あ?おめぇ知らねぇのかい。おめぇと同級の息子じゃ。あの馬鹿の息子、わかるじゃろ」



そう言って、また新たに酒を酌む。

女はしばらく考えこんで、理解したのかポンッと両手を合わせた。



「あいつね!わかったわかった。あたしの年代の国王騎士で馬鹿っつーんならあいつしかいないしね!」


「息子も親に似て馬鹿じゃ。顔もよぅ似とるわ」


「ふーん。一回見てみたいなぁ…」





























「……姐さん、逃げよう…」


「…そうやな。ばれたら…私なら未だしもあんたは生き残れるかどうか…」


「…ああ…なんたってこいつは…」












―――…ガシャーンッ!












クレストが何か言いかけたところで、何かが割れる凄まじい音が。

それは先程までクレストが聞き耳を起てていた場所で酒瓶が割れた音。


いち早く感づいた和葉に間一髪で手を引かれ、今は少し離れたところで二人は息を潜めていた。

危ない。非常に危ない。


クレストは自分の血の気が引いていくのを感じた。きっと酒瓶を投げ付けてきたのはあの女だ。こちらに気付いてしまったのだろうか。




――…すると、すぐ側でにゃあ、と猫の鳴く声が。




















「……なーんだ、猫か。どっかの汚い鼠かと思ったのにさ。あんた猫飼ってんの?」


「ここ最近住み着いた野良猫じゃい。あんまり脅かしてくれるな」


「…ふーん、あんたが猫ねぇ…」















……大丈夫だ。宗十郎殿が上手くやってくれる。

和葉と目を合わせ、深く頷いた。