「まあ自己紹介はここまででええわ。ほなうちらは奥に上がらせてもらいましょうか」


「……おい和葉ぁ。おまえいきなり来てなんかや。鍛冶屋ならまだ開店しとらんぞ」


「ええやないか、宗。あんたの店なら年中ずっと閉店しとるやないかい。今日は客として来たんじゃないんや。ちょいと此処で話でもしようと思ってなぁ…」



突き刺さるような目付きを向けてくる宗と呼ばれた宗十郎。しかしその顔は怒っていることはなく、ただニヤリと口角を上げていた。
和葉は上品に微笑み返す。

どうやらこの二人は、大分親しい関係らしい。



「話ってこたぁ…………仕事か?」

「そうや。今回は珍しく相方同然のクレストからの依頼や」

「…………へぇ、てこたぁおまえ…」



瞬間、二人の笑みが更に深まったように見えた。















「……誰を殺るんだ?情報屋」



まるで獣のように小さな牙を覗かせた宗十郎。視線は真っ直ぐクレストを見ていた。

探るような目付き。よく見る目だ。
裏世界では、裏のまた裏、またまた裏を探りながらではないと生きてはいけない。
またそれを回避することを身につけることも大切なのだ。



「………俺は情報屋なんで…何か貰わないと情報はあげられませんね」



また、お得意の笑みを浮かべた。



「…………チッ。ケチぃな情報屋」


「それで金稼いでるもんで。これはどうしようもないっす」



面白くなさげに舌打ちをして、視線を反らされた。

………これで良い。








「………てわけや、宗。私等は仕事の打ち合わせせなあかんねん。別に本格的にコソコソ表通りで打ち合わせもええんやけど、ちょいと都合悪ぅなってなぁ…。此処借りてもええやろ?」


「……ケッ、…おい皐月ぃ、茜ぇ、茶ぁだせ茶をー。一応我が家の客じゃけぇのぉー」


「お、流石や!見直したで宗十郎!あんたは懐のでっかい大男やぁ!」


「ふ、今頃気付いたんか。遅いわ」



親しげに会話を始めた二人の背景には、忙しげに少年少女が動き始めていた。
少女の方は少々、…いやかなりやる気がなさそうだが。