ゴッドネス・ティア

どこで一息つこうか、と辺りを見渡していると……視界の端に何か映った。

水色の髪を風に踊らせながらパタパタと走り回る人影とは…



「…………姐さん、早く場所を移そう」


「……なんや。そのなんか不都合でもあるような顔は……まあええけど」



視界の端に、国王騎士の一人…乙葉華蓮が映った。

何をそんなに急いでいるのか、血相を変えて人にぶつかるのにも気にしないで一目散にこの場を走り抜けたが、気は抜けない。

今ここで自分が見付かるのは、……後々物凄く面倒臭いことになるだろう。

国軍という鎖に繋がれた忠実な犬…それが国王騎士なのだから、こんなとこ見られたら上の奴らに報告するに決まっている。

…本当に犬のようだ。ただ飼い主の命令を聞くだけの。


……だから、国王騎士や軍隊のような奴らは嫌いなんだ。










「…あんたは昔っから面倒臭い複雑な仕事ばっかしてはるからなぁ…、今回もかなーり複雑な仕事なんやろ?……じゃあ、とりあえず場所を移そうかねぇ………あっちや」



華蓮の姿は見えなくなったが、まだそわそわとしているクレストに呆れたような笑みを見せて、和葉はある場所を指差した。

すぐ傍にある、小さな小さな…鍛冶屋だ。



「あそこならお得意さんしか入れてくれへんから、知り合いに会うこともないやろ。私そこの鍛冶屋の頭と顔見知りやから大丈夫や」



そう微笑んで言うと、賑わう人だかりやら何やらをくぐり抜け、クレストを中へ導いた。

お得意さんしか入れないからか、店の中は外とは打って変わって静かだ。


その辺に散らばっている工具やら木材か何かをキョロキョロと見ていると、隣の和葉は懐から小さな鈴を取り出してチリンと軽く鳴らした。



「来たでー、茶ぁくらい出してくださいな」