最近まで空は雲一つ無かったのに、何故か今日は煩い程激しく雨が降っている。


窓から空を見上げようとしても、雨が強すぎてとても顔なんて出せやしない。

仕方なく、雨が吹き付ける頭上の小窓を睨んでちょこんと座り込んだ。



相変わらず馬車は揺れるし、雨は煩い。

馬車の揺れには大分慣れたが、良いものではないから余計煩わしい。



そんなときに更に煩わしすぎる奴が自分の顔を覗きこんでくるもんだから、イライラは更に増した。


相手はじっとこちらを凝視するだけで、微動だにしないからこちらも対処に困る。


だからとりあえず睨んだ。



「………………なに凝視してるんだよ。こっち見るな金取るぞ」


「…………」



眉間を寄せ、唇を噛み、相変わらず馬鹿そうな顔をした長身青年を睨み上げた。のに、彼はなんの反応も示さず、ただぼうっとこちらを見ている。








………不快だ。

…………非常に不快だ。









とうとうイライラのピークに達したのか、立ち上がって長身青年の頭に拳を一つ、落とした。

簡潔に言うと、酷く殴った。



「―――…ゔぉ!!!」


ゴンッ、という音がして、意味の解らない行動を続ける二人以外の三人はこちらを見た。

だがそれは一瞬で、何事も無かったかのように視線を戻す。




げんこつをくらった青年はハッと顔を上げ、いつのまにか立ち上がっていた金髪の少年を見上げた。

少年は何故か怒っているようだ。まあいつものことなのだが。






「――…あ゙ーーッ!うざい!うざいうざいうざいうざい!超ー、う、ざ、い!!なんなんだよレイ!その微妙に真剣な眼差しはなんなんだよ!レイのくせにむかつくー!!」



長身青年、否、レイを殴った拳をわななかせ、怒りに震える少年。

天使のような華奢な容姿のくせに、今現在の表情といえば、怒り狂った夜叉のよう。